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2019.10.4

夜のお堀が生み出す幻想空間 白秋祭がむすぶ水辺の縁

コト

西鉄柳川駅からバスで10分。御花前バス停で下車し5分ほど歩いたところに、柳川が生んだ詩聖・北原白秋の記念館があります。「あめあめふれふれ かあさんが」で始まる童謡『あめふり』など、日本に暮らす者なら一度は口ずさんだことのあるであろう童謡をはじめ、詩人、歌人として数多の作品を世に送り出した偉人白秋。熊本県玉名市に生まれ、幼少期を柳川市で過ごした郷土柳川市内には記念館も設立され、作品とともに「白秋先生」の愛称で広く親しまれています。

白秋が没したのは昭和17年11月2日(享年57歳)です。以後、命日を偲んで毎年11月1日から3日の3日間、白秋祭水上パレードが行われているのをご存知でしょうか。
祭が始まるのは、黄昏時の午後6時。柳川市内の川下りコースに設置された舞台を、どんこ舟から鑑賞できます。全国から白秋の強固なファンが集う、白秋への愛が溢れる、ここ柳川でしか体験できない秋の風物詩です。

水上パレードには1日あたり約60隻が参加。3日間でのべ3,000人が幻想的な川下りを楽しみます

お堀沿いには何百もの提灯が下がり、水面に照らされる明かりが幻想的な雰囲気を作り出します。通りからは歓迎の意味を込め、手持ち花火を持った住民の方々がお出迎え。舟に乗るお客さまは、そこかしこで市民の方々の“おもてなし”を受けます。

舟にお鍋やビール・お弁当を準備したらいざ出発です。開会の挨拶が行われる水上舞台には市民コーラスのみなさまが出迎え、白秋作の童謡で、続く舟旅へと送り出してくれます。船頭さんの手慣れた竿さばきでゆっくりと舟が進むと、お堀沿いに姿を現すのは特別に設けられた21会場(2018年度)もの水上舞台。市民コーラス、吹奏楽、お囃子、郷土芸能「どろつくどん」など、柳川を拠点とする約20の団体が出演します。そこでは白秋の歌曲が聴けるだけでなく、旧柳川藩藩主が戦の出陣時に打ち鳴らしていたという太鼓の音を聴くこともでき、柳川で生まれた多様な音楽に酔いしれる体験ができます。中には琴を奏でる高校生や、鮮やかなバチさばきを見せる小学生の姿もあり、伝統が大切に受け継がれていることになんとも幸せな気持ちになります。

開会式の舞台を前に停泊するどんこ舟。1隻の定員は16人で、地元サークルで親睦を深める舟もあれば、会社で日頃お世話になった方をおもてなしする舟もあります

舟は舞台の目の前を通り、川下りのルートを下っていきます

およそ1時間をかけた、約4kmの川下りは夜8時半ごろに終着点へ。クライマックスには380発の打ち上げ花火があがります。
水上パレードには3日間で約190隻の舟数があるにもかかわらず、予約開始後は毎年すぐに売り切れてしまうほどの人気ぶり。20年前の白秋祭を知る方によると、チケットの販売日には徹夜組も出て、当時1日140席ほどあった貸切舟は即日完売したといいます。

水上パレードの後は白秋詩歌苑での献詩・献酒が行われ、参列者全員で『帰去来』を合唱し、白秋祭は幕を閉じます。
「白秋先生」と親しみを込めて呼び、その命日を3日間ものお祭りで偲ぶ柳川市民の心には、「あめあめふれふれ」と、降る雨も楽しむ朗かな童謡のように、日々を楽しむ文化が受け継がれているのかもしれません。

舟からも陸からも楽しめる晩秋の白秋祭。今年の11月1日から3日は、柳川市民のおもてなしと白秋先生が残した音楽の文化を体験しに、ぜひお出かけしてみてはいかがでしょうか。

[INFORMATION]
■「第67回 白秋祭水上パレード」
開催日時:2019年11月1日(金)・2日(土)・3日(日)

<問い合わせ窓口>
住所:〒832-0065 福岡県柳川市沖端町35(MAP) 一般社団法人 柳川市観光協会
電話:0944-73-2145
FAX:0944-72-9013
メール:info@yanagawa-net.com

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