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2019.7.18

70年前の大牟田を知る路面電車「204号」が、駅の新しい景色を作っていく

コト

地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の発着地である大牟田駅。その西口広場に2019年3月より、どこか懐かしさを感じさせる色合いの車両が登場しています。
この車両は1943年に製造され、1952年まで大牟田市を走っていた路面電車「旧大牟田市内線204号(通称204号)」。お客さまを運ぶ電車としての役目を終え、現在は市内外の観光パンフレットが手に取れる案内所として、新たな形での活用が始まっています。

大牟田駅駅舎の目の前に現れた204号。木陰の下に心地よい空間が出来上がっています

駅前の賑わいづくりに携わられている「大牟田たーんとよかとこ協議会」猿渡春香さん、「大牟田商工会議所」奥薗征裕さんに、今回の取組みについてお話をうかがいました

路面電車が大牟田市を走っていたのは、1927年から1952年までの25年間。炭鉱のまちとして栄え多くの人が暮らしていた当時、路面電車は人々の生活の足として活躍していました。
「当時は炭鉱で働く方の社宅を中心に、市内に4~5つの市街地があったんです」と奥薗さん。それぞれの市街地を繋いでいた路面電車は、大牟田市のにぎわいの象徴だったと言います。

204号は大牟田市内線の廃線後、現在の八女市と久留米市にあった福島線を経て、福岡市内線でも活躍。電車としての役割を終えた後も、山口県光市で読書室として活躍ののち、2011年に大牟田市の有志により結成された「204号の会」に引き取られ、2012年より市内の飲食店の敷地内で保存・公開されていました。

「駅前へ移設を」との声が挙がったのは、2018年8月のこと。市内の主要企業が加盟する「大牟田経済倶楽部」の提案から移設が完了するまでは、実に7ヶ月という急展開。多くの人による「貴重な車両を残したい」「大牟田市の新たなにぎわいの一助となってほしい」との思いが実を結んだ成果でした。

現在の204号の車内では、運行当時の大牟田市の地図や204号の歴史が書かれたパネルを見ることができます

西鉄の筑紫車両基地にて、西鉄テクノサービスのもと行われた修復作業。傷みが激しく凹凸ができていた側面も綺麗になりました

車内も可能な限り現存の状態を残しながら修復。訪れた方からは昔を懐かしむ声だけでなく、「床が木の電車を初めて見た」との新鮮な声も聞かれます

実は修復された車両は、福岡市内を走っていた当時の色で塗装されています。大牟田市内を走っていたときはブルーだったという説もありますが、正確な記録等が残っていなかったため、廃車された当時の色に戻すことになりました。そのことについて猿渡さん、奥薗さんへ尋ねると、「大牟田市の方はもちろんですが、福岡市内からいらっしゃる来訪者の方をお迎えすることも考えると、親しみやすくて良いですよね」とお二人。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」が運行を開始した3月には、列車到着に合わせて「旅するヴィンテージ」と題したマルシェイベントも実施。大牟田市を訪れる方々を「いらっしゃい」と明るく出迎える空間が、204号を中心に出来上がっています。

「産業のまち」大牟田をイメージし、アンティーク風雑貨やクラフト作品を集めたマルシェ「旅するヴィンテージ」。今後も月に一回程度の開催が予定されています

列車を降りた後の楽しみ方を提案する、観光タクシーによる市内外のツアーも企画される猿渡さん。おすすめは三池港の展望台から見える夕日と、今秋公開予定の映画「いのちスケッチ」のモチーフとなった大牟田市動物園だそう

今後についてうかがうと、「204号にはカフェなどの機能を持たせることで、駅前の場の価値をさらに高めていきたい、そして大牟田駅を観光列車の発着駅として覚えてもらいたい」と思いを話してくださいました。通勤や通学などの移動の拠点として利用されていた大牟田駅に、「観光列車の発着駅」「204号がある場所」という特別な意味が加わった今、大牟田駅はこれからの大牟田市の新しい景色を作っていくスタート地点になるのかもしれません。市民に愛される204号を中心に、新たなにぎわいが生まれていきそうです。

[INFORMATION]
■204号の内部公開
8:30~17:00(金曜日は17:30まで)

■旅するヴィンテージ~the trip vintage~
今後の開催状況についてはこちら

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