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2019.3.6

ごみではなく「資源」という当たり前。「ゼロ・ウェイスト」を目指す大木町で出会った循環型のくらし

コト

西鉄福岡(天神)駅から50分ほど。久留米市と柳川市の中間に位置する大木町は、田園風景と水路(掘割)が広がる、人口約14,000人が暮らす町です。掘割の面積が町の14%を占め、きのこ・いちご・アスパラガスといった新たな特産物が生まれるなど、筑後川流域の肥沃な土地を生かした農業地域として知られています。

湿地の水はけを良くするための掘割(クリーク)の建設は奈良時代末ごろにさかのぼります。現在も農業用水として使用されているというから驚きです。

この大木町の新たな特産物を支える仕組みのひとつとして、循環型のくらしを実現する取り組みが進められています。その取り組みの元になったものが、「ゼロ・ウェイスト宣言」です。
ゼロ・ウェイストとは、「無駄・ごみ・浪費をなくす」という意味です。国内では徳島県上勝町、熊本県水俣市、奈良県斑鳩町の3つの自治体がゼロ・ウェイスト宣言をおこなっており、大木町が宣言をおこなったのは2008年のことでした。
地球温暖化による気候変動の原因が、私たち人間の活動や大量に資源を消費する社会にあるとし、高度成長期から続く大量生産、大量消費、大量廃棄という無駄の多い暮し方を見直して、「これ以上未来の子どもたちに“つけ”を残さない町を作ろう」という思いがきっかけだったといいます。

今回案内してくださったのは、大木町役場環境課係長の石川剛さんです。循環型のくらしを支える施設として整備された、環境プラザとおおき循環センターくるるんをご紹介いただきました。

環境プラザ内の分別スペース。向かって左のビンコーナーではビン類が透明・茶色・その他など色別に仕分けされています。

大木町の分別品目は29種類。

環境プラザでは、大木町が行っている29分別のうち燃やすごみ以外の28種類のごみを分別して出すことができます。平屋建ての倉庫が立ち並ぶ敷地内には、使用済みの缶やビン、ペットボトルを収集するコンテナや、生ごみ、調理油を収集するスペースが設けられています。敷地の奥には、メガネや時計、ソファ、布団などを収集するスペースもあり、集められたもののほとんどがリサイクルされています。
毎日の生活で、何気なく”ごみ“とみなされている品々が、大木町では貴重な資源として再び世の中に出て行く準備をしていることがわかります。

続いて向かったのは、環境プラザがから車で5分ほどの場所にある『おおき循環センターくるるん』。まず目に入るのは、ずらりと並ぶ生ごみ専用の回収タル(生ごみタル)です。

生ごみ受入れ室前に並んだ生ごみタル。各区域から回収する生ごみが、この容器に入れられおおき循環センターにやってきます。後ろに見えるのは、メタンガスを貯蓄するタンク。

「家庭から回収した生ごみは軽トラックでおおき循環センターに運ばれます。ここでは生ごみと一緒に、一部の生産農家から回収したきのこくず等も小さく砕いて処理しています。平成18年に稼動を始めたおおき循環センターには、今も年間約3,000人の方が視察にみえます」

石川さんに案内され訪れたのが、おおき循環センター内の生ごみ受入室です。受入室の中では、各家庭から回収された水色の生ごみタルが並び、循環センターの担当者がタルの中のごみを受け入れ口へ流し込む作業をしていました。

生ごみは、受け入れ口の下にあるカッターで細かく裁断され、町内から運ばれたし尿や浄化槽から出た泥と一緒になります。その後、メタン菌の力を借りて発酵させれば、液状の肥料「液肥」の完成です。
メタン菌発酵の途中で発生するバイオガスは、発電機の燃料として利用され、発電機で電気と熱を作り出してくれます。石川さんによれば、「施設内の約7割の電気をまかない、メタン発酵槽内の加温や生ごみタルを洗う時のお湯などにも利用される」とのこと。発生するバイオガスを利用することで、循環センターの省エネルギーにもつながっています。

回収された家庭ゴミ

おおき循環センターの入口横にある液肥タンク。使用リストに記名すれば、使用したい分だけ持ち帰ることができます。(大木町の住民に限る)

一連のサイクルを経て出来上がった液肥は、米、麦のほか、菜の花や家庭菜園の肥料として利用されています。また、この液肥で育った「環のめぐみ」というブランド米は、町民へ特別価格で販売されるそう。分別の努力が日常生活の中に還元されているんですね。

大木町で実践されている「循環型のくらし」は、住民のみなさんの協力があってこそ。そんな日々の手間ひまが、毎日のくらしをより充実したものにしてくれるのかもしれません。

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