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2019.1.11

新しい味わい、食感、組み合わせ、ほんの少しの‘驚き’がスパイスに。筑後の‘美味しい’をひと皿にのせて。

ヒト

地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の要は、なんといっても筑後地区の厳選された旬の食材を使った食事です。列車内の窯で焼き上げるピザを監修してくださるのは、独創的な窯料理で人気の高い「エンボカ」のオーナー今井正さん。アミューズと前菜(肉と野菜のプレート)を監修してくださるのは、福岡在住の人気料理家・渡辺康啓さんです。列車での料理ははじめてというおふたりの手から、一体どのようなメニューが生まれるのでしょうか? 普段のメニューづくりへの想いや、今回「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」で使う筑後の食材やお料理についてお話を伺いました。

<メインディッシュ担当>
株式会社エンボカ代表
今井正さん
2001年に長野県軽井沢にて薪窯焼ピザの店「エンボカ」をオープン。旬の野菜が主役のピザや薪窯を使ったシンプルな野菜料理が評判となる。現在、東京、軽井沢、京都の3店舗を展開。元建築家ならではのクリエイティブな発想溢れる料理を求め、全国各地から来店するファンも多い。

<アミューズ・前菜担当>
料理家
渡辺康啓さん
1980年生まれ。COMME des GARCONSにて働き、独特の美意識を学ぶ。2007年、料理家として独立。東京にスタジオを構え、料理教室をメインに活動。たまたま訪れた福岡の食に惚れ込み、2015年に活動拠点を福岡へ移す。現在もテレビ、雑誌などのメディア出演の他、全国各地の食材を使った料理会を開催している。

旬の美味しさを最大限に

―素材を大切にした料理を得意とされるおふたりですが、メニューを考案する時に心がけていることは何ですか?

今井 「僕の場合は、自然の状態になるべく手を加えずに提供したい、というのがまず基本にあります。だから食材そのものの風味や食感が最高に輝く時季に、その味わいだけでなく、素材の姿も生かした調理をしています。エンボカのピザって、いつも‘新しい発見’があるんです。
例えば、れんこんを使うと決めたなら、れんこんをずらりと敷き詰めたオールれんこんのピザ。それが季節によって、大葉だったり、春菊だったりと素材は変わりながらも、常に単品で勝負しています。今までは脇役に甘んじていた大葉をピザの主役にすることで、‘本当はこんな味がするのか!’というところを表現したいんです。クリエイティブなピザというか、料理人の常識では考えもつかないような発想をしなきゃいけない、というのが常に課題。だから、味わいや食べ方だけでなく、見た目の形やインパクトも大切にしています」

渡辺 「僕も余計な手を加えず、食材そのままのストレートな美味しさを引き出すシンプルな料理が多いですね。食して‘美味しい’。ただそれだけでいいんです。変わったことをして驚かせるのではなく、‘美味しい’っていうことだけで驚かせるっていう。驚かせ方も実にシンプルです。
例えば、れんこんが1つあったとすると、煮たり焼いたり、と、やりたいように進めて「美味しくなったな」と思ったらそこでストップ。だから焼いて塩だけふって美味しいんだったら、それ以上のことはしません。もの足りなければ、ハーブの香りを加えたり、バターを加えたりとひとつずつ足していきます。
新しいことをしなくては、という気持ちはあまりないですが、柔らかいものと硬いものを合わせたりと、食感は結構気にする方かもしれないですね」

九州・筑後の食材の生命力

―おふたりとも食材そのものの存在感を一番大切にされているということですね。メニューを考案するにあたり、運行開始の1年前から季節ごとに生産地を視察していただいています。今回、筑後の秋の食材を視察されていかがでしたか?

今井 「九州でのお仕事は初めてですが、非常に面白いです。秋の食材探しで特に感じたのが、筑後の生産者さんの強さ。私が店舗で使用している長野から京都のエリアの食材は、今年の猛暑の影響をもろに受けているものが多いです。それなのに、筑後の食材には全くそれを感じさせない。生産者さんはみなさん、‘今年は暑くて甘くていいのができた’と明るいんです。やっぱり西っていうのは暑さに強いですね。九州は温かいな、力強いなと思いました」

渡辺 「まず、筑後地域にこんなにたくさんの素晴らしい食材があることに驚きました。特にフルーツが美味しかったですが、印象に強く残ったのはうきは市の流川れんこんです。昔ながらの方法で、固い泥を鍬で掘りすすめながられんこんを採るんですが、そのれんこんの美味しいこと。この美味しさを、みなさんにもぜひ知ってもらいたいなと思いました。あと、新しい農業に挑戦されている若い農家さんもいらっしゃったので、これからの筑後の農業がどう発展していくのかも楽しみですね。僕たちの料理が、筑後の農家さんを応援するきっかけになればいいなと思います」

―揺れる列車内でお客さまにお料理をお出しすることになりますが、普段のメニュー作りとの違いや苦労した点などありますか?

渡辺 「揺れていても食べやすいようなメニューをお出しする予定です。あと、“この料理はこの下準備まで終わらせて列車に積もう”、“どの工程からなら列車内で作れるだろう”という料理の手順には工夫が必要でした。僕はレストランを持っている訳ではなく、普段は料理教室やイベントで料理を作ったり、メディア向けにレシピを作成したりしています。今回はじめてこのような形でみなさんに料理を提供できるということで、頑張り甲斐がありました」

今井 「列車内ということで、ピザは、電気窯で焼くことになりますが、完成度にはかなり自信があります。エンボカでは薪窯です。また、小麦粉も、店舗では北海道産を使用していますが、『THE RAIL KITCHEN CHIKUGO』では筑後産を使用するなど、お店とは違う部分も多くあります。でも、やっぱりエンボカの力を100%発揮できていると思います。列車内で生地を成形して具材を載せて、窯で焼き上げる。その一連の作業を連携しておこなうために、調理スタッフにはエンボカに実際に来てもらって、研修をする予定です。九州地区ではなかなか食べていただけなかったエンボカオリジナルのピザを楽しんでもらえたらと思います」

―「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の予約がついに開始しました。3月からの春メニューの中で特におすすめしたい食材はどれでしょう?

今井 「八女市産の筍ですね。東京のエンボカでは、筍に煮きり醤油の味つけをしたピザで勝負しているのですが、今回は、店舗とは違うオリジナルソースを使います。地元の方が召し上がってきた、今までの筍の味わい方とは全く違った食べ方を提案する予定です。名産地ならではの筍の食感や味わいを、存分に感じていただけると思います」

旬野菜のピザは、基本2名様でシェアしていただけるようハーフ&ハーフで提供。春メニューでは、八女市産の筍と、大木町産のアスパラガスをたっぷり使った、目にも鮮やかなピザがお目見えします。

渡辺 「私のおすすめは有明海柳川産のお刺身海苔です。これはかなり感動モノの美味しさで、東京や福岡の料理教室でも素材として使わせてもらいました。幻の生海苔と言われるだけあって、旨みは抜群です。博多和牛のとろけるような食感ともぴったりで、特製のソースを加えることで旨みがさらに増しています。筑後の食材が、純粋に‘美味しい’と思えるひと皿です」

これまでは、生産者やその周りの極一部の人しか食べることができなかったお刺身海苔。

コースには、アミューズ、野菜のプレート、肉のプレート、旬野菜のピザ、プティフルと食前・食後のドリンクが含まれ、メニューは春(3月~5月)・夏(6月~8月)・秋(9月~11月)・冬(12月~2月)と季節に応じて変わります。どんな新しい驚きが料理に仕込まれているのか、筑後ならではの旬の食材をぜひ列車で味わってみてください。

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