旅は終点から始まる! 定松千歌さんに聞く 知っているようで知らない「大牟田」のきほん
天神から西鉄電車にご乗車いただくと、いくつか景色が変わるターニングポイントがあります。まずは賑やかな都心から住宅街、そこから筑後川を超えてのどかな田園地帯を抜けると、終点に見えてくるのはノスタルジックな炭鉱町・大牟田市です。
駅に降り立ってみれば、線路越しに目に飛び込んでくるのは、青空に白い煙をたなびかせる煙突と昭和の面影を残す住宅やアーケード。初めて訪れたのにどこか懐かしさを覚えるような独特の空気感は、散策の楽しみをより一層引き立ててくれます。
街中をよく見ると、思わず寄り道をしたくなるようなユニークなお店が顔をのぞかせます。
今回「大牟田のきほん」を教えてくれるのは、アーケード街の少し外れで「INTHEPAST」というスペースを立ち上げた定松千歌さんです。大牟田市で生まれ育ち、仕事で大牟田を離れ20数年後の昨年、再び戻ってきたという定松さん。古きよき大牟田と、今こそ立ち寄りたい新しい大牟田の顔と、その両面から魅力を教えていただきました。
定松千歌さん
高校生まで大牟田で過ごし、その後、熊本を経て福岡市内でご主人と共にグラフィックデザイン事務所「THISDESIGN」を立ち上げる。2012年から「つくる、たべる、かんがえる」をコンセプトにしたリトルプレス「PERMANENT」の活動をスタート。さらに、25年ぶりに戻った地元・大牟田にて、デザインオフィスをベースにした多目的スタジオ「INTHEPAST」をオープン。衣食住に関するさまざまな活動も行う。
天神から電車で1時間
「炭鉱のまち」で起こり始めた新たな流れ
―定松さんは大牟田のご出身ということで。長年活動を続けられていた福岡市内からこちらに戻ってこられた経緯を教えてください。
「大牟田市のこの場所に戻ってきたのは約2年前です。2012年以降から食べることを考える冊子「PERMANENT」の発行とワークショップをやってきましたが、その拠点となる場所を探しているうちにたどり着いたのが地元だったんです。最初は大牟田市に戻ってくるなんて思いもよらなかったのですが、なによりアクセスが良いのが一番の決め手でした。まず西鉄電車の特急が止まるから、福岡市内まで乗り換えなしで1時間あれば着きます。高速道路や空港にも近く、佐賀県や熊本県にも約1時間ですよ。
福岡市内でワークショップを開くと参加されるのは福岡市在住の方が主ですが、ここでワークショップを開くと、福岡、佐賀、熊本など、いろいろな場所からいらっしゃいます。」
―なるほど確かに!考えてみると、福岡市内、佐賀や熊本など、いろんなところから1時間圏内ですね。
「昔から、大牟田の人は通勤や通学で福岡方面や熊本方面を選ぶ人も多くて、休日になると結構若い人が歩いているんですよ。最近では、立地の良さからか、Uターン、Iターンの人も少しずつ増えているようです。」
―昭和が残る町並みも若い世代から見ると新鮮かもしれませんね。このアーケードを写真におさめようと訪れるカメラ愛好家も多いとか。
「正直、私にとっては見慣れた町並みだけど。それでもこのあたりは昭和の建物が多くて、高いビルが少ないので、空が広くてきれいです。天気がいい日は本当に気持ちがいいですよ。」
おっしゃる通り、晴れ晴れとした青空に煙突からの白い煙が一筋立ち上る景色は思わずシャッターを切りたくなりますね。さあ、定松さんもオススメする、大牟田の魅力を探しに出かけましょう!
OLD is NEW な魅力にあふれた
定松さんオススメの大牟田スポット
コーヒーサロン はら
―こちらの「コーヒーサロンはら」は、クラシック音楽がよく似合う上品な純喫茶ですね。
「ここは約40年続く喫茶店なんですよ。一杯だてのコーヒーは30種類以上のバリエーションがあり、珍しい『リキュールコーヒー』も楽しめます。手作りのサンドイッチやケーキセットなどの軽食はどれも迷ってしまうほどおいしい。それに、オーナーの上野由幾恵さんは『大牟田日本フィルの会』の事務局長でもあるんですよ。上野さんに会いに、県外から訪れるお客さんも多いんです。」
books&cafe taramu
内装はオーナーの村田さんが手がけたそう。本棚の柱に水道用のパイプを使ったり、引き出しの取っ手をキーホルダーに活用したりと、DIYのお手本にしたいテクニックが随所に散りばめられている。
―ユニークなインテリアのお店ですね。おもしろそうな本が壁一面にあるし、おいしそうなパンとコーヒーの香りがたまりません!
「2016年にオープンした本屋カフェです。もともと図書館司書として長く働いていたオーナーの村田幸さんが集めた小さな出版社の本や趣味の入門書、絵本など、ユニークなセレクトは普段本に親しみのない方でも楽しめます。カフェでは、本を片手に食べられるサンドイッチやマフィンが人気で、特にサンドイッチのパンは、その日のおすすめ2種類から選べます。朝7時からのモーニングも人気ですよ。インテリアは、建築家のご主人が手がけられているんですが、『DIYの参考になれば』といろいろな工夫が凝らされているところも見所です。」
―バッグやカレーなど、いろいろなワークショップも開催されているんですね。
「定期的に開催されているイベントやワークショップは、福岡でめったにお目にかかれないような有名作家さんがいらっしゃる事もあるんですよ。オーナーの村田さんは大牟田に長く住まわれているし、カフェには福岡市内からもたくさんのお客さんがいらっしゃるから、とにかく情報通なんです。おすすめのスポットを聞いてみるのもいいかも」
江口栄商店
―一口サイズのお饅頭は散策の合間のおやつにちょうどいいですね。定松さんにとっての思い出の味と聞きましたが?
「大牟田にはお菓子屋さんが多いんですよ。大牟田名物の草木饅頭は小さい頃から食べています。特に『江口栄商店』のがお気に入りです。しっとり感が良くて。年代を問わず老若男女に愛される存在で、地元の人が地元の人に買っていくおやつ。最近では、月曜限定の黒あんもこっそり人気を集めているようです。1個40円でお財布にも優しいのでお土産にもおすすめですよ。」
trattoria nido
―こちらは行きつけのお店とか。どんな時に利用されているんですか?
「うちから徒歩30秒ほどの近さにあるので、引っ越ししてきて最初に行ったお店がここです。食材は近郊でできる農畜産物をはじめ、有明海のものなど大牟田ならではの食材をいただけるし、食についての考え方や料理について互いに話が共感できるので、信頼しているお店です。なので友人が来たりすると連れて行きたいお店になっています。」
―オーナーさんもUターンされた方なんですね。
「オーナーの田中慶太さんは福岡、イタリアやオーストラリアなどいろんなところで経験を積んだのち、大牟田の街づくりに関わる人に感銘を受けて、あえて都心ではなく地元で出店することを決めたそうです。食材にも恵まれている環境みたいです!」
―最後に、定松さんは地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」をどんな風に楽しんでみたいですか?
「地元の人って、その土地の情報をあまり意識する機会がなくて、むしろ初めて来る人から地元の情報を聞いてハタと気づかされることってあるんじゃないかと思います。西鉄の観光列車で、多くの方に大牟田を訪れてもらい、地元の私たちは、その人達と触れ合う事で、地元の良さを再度実感する。そうやって双方が大牟田という土地に愛着を持っていけたら素敵ですね。」
定松さんが教えてくれたのは、地元の人にも観光客にも愛されるスポットばかり。「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」で、両者が触れ合うきっかけが生まれれば、より新たな魅力を発見できる事でしょう。
ありがとうございました!
スポット情報はコチラ!
■INTHEPAST
住所:大牟田市本町1-2-19(MAP)
HP:https://www.facebook.com/STUDIO.INTHEPAST/
■コーヒーサロン はら
住所:大牟田市本町1-2-19(MAP)
電話番号:0944-53-0426
営業時間:10:00~22:00
休み:なし
■大牟田神社
住所:大牟田市本町1-2-22(MAP)
電話番号:0944-52-5090
HP:http://www.geocities.jp/o_jinja77/
■books&cafe taramu
住所:大牟田市久保田町1-3-15(MAP)
電話番号:0944-85-8321
営業時間:7:00~19:00、土日祝11:30~19:00
休み:不定休
HP:http://taramu.chillout.jp/
■江口栄商店
住所:大牟田市草木1020-1(MAP)
電話番号:0944-52-4829
営業時間:8:00~18:30(売り切れ次第終了)
休み:なし
HP:http://www.eguchi-sakae.com
■trattoria nido
住所:大牟田市本町1-2-13 辰巳屋ビル1F(MAP)
電話番号:0944-85-8283
営業時間:18:00~24:00
休み:月曜
HP:https://www.facebook.com/trattoria.nido/
■西鉄大牟田駅レンタサイクル
住所:西鉄大牟田駅1F駅務室(MAP)
電話番号:0944-72-2503(西鉄柳川駅)
営業時間:8:00~19:00
貸出料金:1日500円、時間貸し1時間150円(以後30分毎に50円)
(電動アシスト付自転車は1日800円)
■三池炭鉱宮原坑
住所:大牟田市宮原町1-86-3(MAP)
電話番号:0944-41-2515
営業時間:9:30~17:00(最終入場16:30)
休み:なし
■大牟田市石炭産業科学館
住所:大牟田市岬町6-23(MAP)
電話番号:0944-53-2377
営業時間:9:30~17:00
休み:毎月最終月曜(祝日の場合は翌日)